医学系研究のCOI(利益相反)に関する指針

医学系研究のCOI(利益相反)に関する指針

一般社団法人日本脳卒中学会
COI 委員会


  • I.指針策定の目的

    医学系研究においては産学連携による研究・開発が行われる。日本では大学などの学術機関において国家予算による研究費は米国等に比して少なく、研究費の約50%を民間企業に依存している。 すなわち、本邦においては産学連携による医学系研究は医学の進歩のために不可欠できわめて重要な役割を担っている。

    産学連携による医学系研究では、学術的成果を社会へ還元することによってもたらされる公的利益だけではなく、産学連携に伴い取得する金銭・地位・利権などの私的利益が発生する場合があるので、研究者個人においてもこれら2つの利益が相反する状態すなわち利益相反 conflict of interest(以下、「COI」と略す )が不可避的に起こり得る。

    産学連携に伴って不可避的に生ずる COI が適切にマネージメントされていない場合には、研究の遂行やデータの解析方法あるいは研究結果の解釈が歪められるという研究不正に陥り、当該研究のみならず、研究を行った個人や研究組織さらには学術団体が社会から の信頼を失う危険がある。また、適切な研究成果であったにもかかわらず、COI が適切にマネージメントされていなかったがゆえに、中立性や透明性を欠いた研究と見なされてしまうことにもなる。

    産学連携は社会あるいは報道などから時に疑惑をもって捉えられることがあるが、適正な産学連携は医学医療の進歩のために必須である。そして、産学連携による医学系研究においてCOI が生じること自体に問題があるわけではない。COI がないということは決してその研究者の倫理性の高さを意味するのではない。研究活動が活発である有能な研究者ほど産学連携により研究を行う機会は必然的に多くなり、COI が生じるはずである。すなわち、COI が多いということは、社会的な疑念を持たれるべきことではなく、むしろ研究者の能力の高さを示すひとつの指標である。何よりも重要なのはCOIを適切にマネージメ ントすることにより、研究の透明性と中立性を担保することである。適切にマネージメン トした多数の COI があることは、研究成果の発表に際して研究者が誇りをもって開示できるものであり、社会からもそれは適正に評価されるべきである。

    学術団体が COI をマネージメントすることの目的は、研究の透明性と中立性を担保するとともに、COI に対する誤解から生じる社会からの疑念や謂れなき批判等から研究者や研究組織あるいは学術団体自体に対する信頼性を保護する仕組みを構築することにある。

    上記のような観点から、一般社団法人日本脳卒中学会は COI に関する本法人の方針を明示するための「医学系研究の COI に関する指針」(以下、本指針と略す)を定める。

    その目的は、本指針に則り COI を適切にマネージメントすることにより、産学連携による医学系研究の透明性と中立性を担保し、研究結果の発表や普及を適正に推進し、脳卒中の予防・診断・治療の進歩に貢献するという本法人の社会的責務を果たすことにある。 一般社団法人日本脳卒中学会は本法人が行う事業に参加する会員など以下に定める対象者に本指針の遵守を求める。

    なお、現在、医学系研究に係る COI マネージメントは、①研究を実施する医科系大学や研究所等の各施設と ②研究成果が発表される専門学会、学術団体の2つで行われている。本指針は後者すなわち研究成果が発表される専門学会・学術団体として、日本医学会の分科会である一般社団法人日本脳卒中学会が、COI マネージメントを行っていくための指針である。また、本指針は一般社団法人日本脳卒中学会会員に対して COI についての基本的な考えすなわち本法人の COI マネージメントのコアとなる内容を記したものであ り、COI の概念その他の詳細については日本医学会のHPなどに記載されているので、それを参照されたい。

  • II.対象者

    COI 状態が生じる可能性がある以下の対象者に対し、本指針が適用される。

    1. 法人としての一般社団法人日本脳卒中学会
    2. 一般社団法人日本脳卒中学会の理事・監事・代議員
    3. 前号以外の一般社団法人日本脳卒中学会のすべての会員
    4. 一般社団法人日本脳卒中学会が行う学術集会および講演会、セミナーなどで発表ないし機関誌「脳卒中」において論文発表をする非会員
    5. 一般社団法人日本脳卒中学会の雇用する事務職員
  • III.対象となる事業活動

    一般社団法人日本脳卒中学会が関わる以下の事業活動を含むすべての事業活動において、すべての参加者に対して本指針を適用する。

    1. 一般社団法人日本脳卒中学会が受託研究費や研究助成費を受けて行う研究
    2. 一般社団法人日本脳卒中学会が開催する学術集会及び講演会、セミナーにおける発表
    3. 一般社団法人日本脳卒中学会の機関誌「脳卒中」における論文発表
      機関誌「脳卒中」への投稿にあたっては著者全員に自己申告書の提出・開示が義務付けられる。もし、著者のなかに企業所属の研究者が含まれる場合には、編集委員会は 1)当該研究者の所属する企業名・ 2)当該研究への貢献内容・3)当該企業からの当該研究への出資額・ 4)発表結果の帰属先・5)研究結果の学会発表や論文発表の決定に関して当該企業が影響力の行使を可能とする契約の有無・ 6)当該研究結果に影響を与えうる企業からの労務提供の受け入れの有無等を確認し、総合的に論文の採否について判断すべきである。
    4. 診療ガイドライン、マニュアルなどの策定
    5. 臨時に設置される調査委員会、諮問委員会などでの作業
    6. 市民に対する公開講座などにおける発表
    7. 企業や営利団体主催・共催の講演会、ランチョンセミナー、イブニングセミナーなどにおける発表

    なお、上記の活動における発表者が企業の正規職員の立場であると同時に大学・研究機関等での非常勤職員(例,講師、客員教授など)、派遣研究員、社会人大学院生である場合、記載する所属は前者の正規雇用の企業名(所属名、職名含む)だけを記載するか、或はそれに加えて大学・研究機関等の名称を併記することのいずれかが求められる。

    また、大学の寄付講座に在籍する研究者や奨学寄附金などの外部資金によって雇用されている大学・研究機関等の研究者などについては、発表に際しての所属や職名は所属施設・機関で使われる正式名称(特任教授、特命教授など)を記載しその資金を提供している企業名を「X寄付講座は、Y製薬の寄付金にて支援されている」「Department of X is an endowment department supported with an unrestricted grant from Y」のように併記すべきである。

    複数の企業などから資金提供されている場合には、細則に定めた基準額(年間200万円以上/企業)を超えている企業については該当する企業名をすべて記載すべきである。

  • IV.申告・開示の対象期間

    申告及び開示の義務がある COI とは役員就任時や発表時点から遡る過去3年間とする。
    一般社団法人日本脳卒中学会の会員については専用HPを用いて前年1年間(1月~12月)における COI に関する自己申告を毎年3月末日までにオンライン登録することが義務づけられているため、前々々年から前年までの連続3年間の COI 自己申告についてオンライン登録を完了していることをもって、COI 自己申告の対象となる事業活動について必要な対象期間(3年間)の自己申告・開示を済ませているものとみなす。

    ただし、COI を自己申告した時点から役員就任や発表までの間に、新たな COI が発生した場合には細則に定める規定に従い、すみやかに修正申告を行う義務を有する。

    なお、一般社団法人日本脳卒中学会が企業や営利を目的とした団体から受託研究費や研究助成費を受けて行う研究については、受託研究契約が成立した後すみやかに法人理事長が COI 委員会に報告し、学会HPにおいてその法人名・研究名を公開する。また、当該研究の発表にあたっても、一般社団法人日本脳卒中学会が法人として行った産学連携研究であることおよび出資者である法人名を開示する。

  • V.開示・公開すべき事項

    対象者は、対象者自身における以下の 1 ないし 6 の事項で、及びその配偶者・一親等以内の親族、あるいは収入・財産を共有する者における以下の 1 ないし 3 の事項について、 別に定める「医学系研究の COI(利益相反)に関する細則」に記された基準に従い、自己申告によって COI の正確な状況を開示する義務を負うものとする。なお、自己申告の内容については、申告者本人が責任を持つものとする。

    1. 企業や営利を目的とした団体の役員、顧問職
    2. 株の保有
    3. 企業や営利を目的とした団体からの特許権使用料
    4. 企業や営利を目的とした団体から、会議の出席(発表)に対し、研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当(講演料など)
    5. 企業や営利を目的とした団体が原稿やパンフレット執筆に対して支払った原稿料
    6. 企業や営利を目的とした団体が提供する研究費
      なお、企業や営利を目的とした団体からの寄付金などが、非営利法人(例,NPO)や公益法人(例,社団、財団)を経由して、受託研究費や研究助成費のような形で提供される場合には、それが高額であればあるほど研究成果についての客観性や公平性についての疑義が懸念されうる。このため、このような受託研究費や研究助成費の交付金額が細則に定めた基準額(年間1000万円)以上であり、企業や営利を目的とした団体が、当該受託研究費や研究助成の専らの出資者である場合には、その法人名・研究費名とともに出資者である当該企業名を記載して、本項(企業や営利を目的とした団体が提供する研究費)として自己申告すべきである。
  • VI.COIと回避すべきこと

    医学系研究の結果の公表は、科学的な判断と公共の利益に基づいて行われるべきである。
    一般社団法人日本脳卒中学会が行う事業に関係するものは、医学系研究の結果を学会や論文で発表するか否かの決定、あるいは医学系研究の結果とその解釈といった本質的な内容について、その研究に対する資金提供者や特定の企業の恣意的な意図に影響されてはならず、また影響を避けられないような契約書を締結してはならない。

  • VII.臨床研究に関する注意事項

    臨床研究は、個人の生体試料を用いた研究から侵襲性のある介入研究まで多岐に渡っている。その中で侵襲性すなわち投薬や手術等、研究対象者に対するリスクが一定程度以上存在する医療行為を用いる介入研究が臨床研究である。臨床研究の中で、新しい医薬品の製造販売承認に際し申請に必要な資料収集のために行う臨床研究を「治験」といい、手術法や承認された医薬品の臨床上の有効性や安全性を研究者が企画発案し検証する介入研究を「研究者主導臨床研究」という。

    研究者主導臨床研究には自ら企画立案と資金調達にて行う研究者主導臨床研究の他に、企業依頼の臨床研究(契約による委託・受託研究、共同研究)、寄付金を資金源とする研究者主導臨床試験、企業審査を受けて契約により実施される研究者主導臨床研究などの形態がある。

    「治験」については、薬事法の下に、平成9年(1997年)の新「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(以下「GCP」)と略す」によって、企業主導あるいは研究者主導の「治験」という形でその実施方法が細かく規定されており、医療施設・機関等との契約の下にその有効性、安全性を確認する臨床研究が行われている。

    一方、「研究者主導臨床研究」についてはヘルシンキ宣言及び「臨床研究に関する倫理指針」に基づいて実施するという基本方針により、研究対象者の生命と人権に対する自主的な配慮と高い倫理性が求められているが、その実施に薬事法の適用を受けないため、研究費の確保、独立した組織によるデータ収集・管理や統計解析、著者資格(貢献度)の評価などは実施する研究者個人の裁量に依存した状態にある。侵襲性のある介入型で自主的な研究者主導臨床研究の実施には、対象症例数が多くなればなるほど多額の資金が必要となり、民間に研究費(寄附金など)を求めることが避けられない。このため、もし、「研究者主導臨床研究」において研究者のCOIマネージメントが適切に行われなければ、倫理性や科学的信頼性が担保されないため、社会から疑義を招くことになる。このため、適切なCOIマネージメントを行うためには、倫理委員会への実施計画書の申請、研究対象者への説明、論文発表等を通じて、研究者主導臨床研究の資金源が適切に開示または公表されなければならないし、研究が適正に実施されるために必要十分な経費かどうかの妥当性も審査されなければならない。なお、臨床研究に係る資金の提供が、企業との適正な契約のもとに支援されれば、説明責任を果たしやすい。

    1. 市販後の医薬品を用いた研究者主導の臨床研究は医薬品の有効性、安全性の検証には欠かせないものであり、臨床現場での標準的な治療法の確立に重要な情報と根拠を提供する。一方、企業にとっても販売促進の視点から第IV相臨床試験への関心が高く、いろいろな形での協力や支援(資金、労務など)が当該の研究実施者に提供されているのが現状である。しかし、金銭面での透明性が確保されないと社会から疑惑を招きやすいため、両者の利害関係の公開を原則とした格段の配慮が求められる。
    2. 臨床研究結果が医療従事者・患者・その他の人々に幅広く利用できるようになることは、公益につながる。したがって、試験結果は原則的に論文の形で公開されるべきである。医学系研究実施者は、関係する企業、法人組織、団体等からの資金、薬剤・機器の提供だけでなく、当該研究のデザイン・企画・データ収集・管理および統計解析などに人的な支援を受ければ、発表の際にすべての情報を論文の中に適切に開示、公開しなければならない。
    3. 公表論文の作成にあたっては著者資格を明確にし、メディカルライター・統計専門家・その他解釈や討議などの助力を受け、これらの人々が著者資格の基準を満たさない場合には、これらの人々の関与に対し適切に謝意(Acknowledgement)を表し、その個人名・所属・資金源およびその他の利害関係を記載し公開するものとする。
    4. 施設・機関へ派遣された企業所属(正規社員)の研究者が、派遣研究者・社会人大学院生・非常勤講師などとしてアカデミアに所属し、研究成果を講演あるいは論文発表する場合には、当該企業名を明記すべきである。また、正規社員として企業所属時に行った研究成果を、アカデミアへ正規職員として転職した後に発表する場合も、所属した企業名を明記すべきである。

      1)研究者主導臨床研究に係る回避事項とその管理
      産学連携にて人間を対象とした介入研究を研究者自ら実施する場合、すべての研究者は、以下については回避すべきである。

      1. 臨床研究に参加する研究対象者の仲介や紹介に係る契約外報賞金の取得
      2. ある特定期間内での症例集積に対する契約外報賞金の取得
      3. 特定の研究結果に対する契約外成果報酬の取得
      4. 当該研究に関係のない学会参加に対する資金提供者・企業からの旅費・宿泊費の受領

      2)研究者主導臨床研究の計画・実施に決定権を持つ研究責任者あるいは研究代表者(多施設共同研究の代表)が回避すべきこと
      研究者主導臨床研究の計画・実施に決定権を持つ研究責任者あるいは研究代表者(principal investigator)(多施設共同研究における各施設の責任医師はこれに該当しない)は、当該研究に関わる資金提供者・企業との金銭的な関係を適正に開示する義務を負っており、以下に記載する事項については特に留意して回避すべきであることが求められる。

      1. 当該研究の資金提供者である企業の株式保有や役員への就任
      2. 研究課題の医薬品、治療法、検査法などに関する特許権ならびに特許料の取得
      3. 当該研究に係る時間や労力に対する正当な報酬以外の金銭や贈り物の取得
      4. 研究機関へ派遣された企業所属の派遣研究者、非常勤講師および社会人大学生が当該研究に参加する場合、実施計画書や結果の発表において当該企業名を隠ぺいするなどの不適切な行為
      5. 当該研究データの集計、保管、統計解析、解釈、結論に関して、資金提供者・企業が影響力の行使を可能とする状況
      6. 研究結果の学会発表や論文発表の決定に関して、資金提供者・利害関係のある企業が影響力の行使を可能とする契約の締結

      但し、上記の 1 ないし 2 に該当する場合であっても、当該研究者が当該臨床研究を計画・実行する上で必要不可欠の人材であり、かつ当該臨床研究が国際的にも極めて重要な意義をもつような場合には、一般社団法人日本脳卒中学会 COI 委員会における審議を経て当該臨床研究の主任研究者や試験責任医師に就任することは可能とする。

      なお、2010年6月に発表された「臨床試験結果の医学雑誌における論文公表に関する共同指針(国際製薬団体連合会・欧州製薬団体連合会・米国研究製薬協業協会・日本製薬工業協会)」では、企業が依頼する臨床試験の公表論文の著者資格は、医学雑誌編集者国際委員会統一投稿規定(ICMJE Uniform Requirements for Manuscripts)に準じることが求められている。ICMJEの推奨(2013年8月)では著者資格の基準として4つの項目をすべて満たしていなければならないとしており、日本医学会医学雑誌編集ガイドライン(2015年3月)は同推奨に準拠して下記4項目を挙げている。

      コンセプトとデザイン、もしくはデータ取得又はデータの解析と解釈に対する実質的貢献研究の構想もしくはデザインについて、または研究データの入手、分析、もしくは解釈についての実質的な貢献をする
      論文の起草、又は重要な知的内容に関わる批判的な推敲に関与する
      出版原稿の最終承認
      研究のいかなる部分についても、正確性あるいは公平性に関する疑問が適切に調査され、解決されるようにし、研究のすべての側面について説明責任があることに同意する
  • VIII.診療ガイドライン策定にかかる注意事項

    診療ガイドラインは、臨床系医学会、臨床医だけでなく、患者支援団体、支払い機関、医療専門家、法律家、消費者などと幅広く利用されている。EBMの手法に基づく信頼性の高いCPGの策定のためには、その策定にかかわる参加者の資格基準を明確にし、バイアスリスクを回避するための COI 管理が強く求められる。特に、診療ガイドライン策定委員会委員と委員長(副委員長)候補の選考には COI に関する特段の配慮が求められる。具体的な COI マネージメントの方法については、日本医学会診療ガイドライン策定参加資格基準ガイダンス(2017年3月)を参考にして、診療ガイドラインごとに決定して対応することが求められる。

  • IX.実施方法
    1)
    COI委員会
    一般社団法人日本脳卒中学会は、COI の管理・調査・審査を行い、さらには改善措置の提案や啓発活動を行うために COI 委員会を設置する。
    2)
    会員
    会員は医学系研究成果を発表する場合、当該研究実施に関わる COI を適切に開示する義務を負う。開示の具体的方法については本法人の「医学系研究のCOI(利益相反)に関する細則」に基づいて行なう。本指針に反する事態が生じた場合には、COI 委員会が審議し、その結果を理事会に上申する。
    3)
    役員
    1. 一般社団法人日本脳卒中学会の理事長は COI 委員会との連携にて、役員・委員等から提出された COI 自己申告書からCOI状態の深刻度を判断し、関係する委員会の委員長・委員などの選考に反映させなければならない。
    2. 一般社団法人日本脳卒中学会の役員(理事・監事・代議員)は学会に関わるすべての事業活動に対して重要な役割と責務を担っているため、就任した時点で自己申告を行なう義務を負うものとする。また、過去5年以内に関連する企業あるいは営利を目的とする団体に所属した経歴があれば、それに関する時期・企業名・役職名を報告する義務がある。その具体的方法については本法人の「医学系研究のCOI(利益相反)に関する細則」に基づいて行なう。もし、COIを自己申告した時点から役員就任時までの間に新たなCOIが生じた場合には、以前に申告された内容を役員就任時に修正する義務をもつ。
    3. 役員就任後に新たに COI が発生した場合には細則に定めた規定に従い、すみやかに修正申告を行う義務を有する。
    4. 役員より提出された自己申告書については、その任期終了後も 5 年間保管する。保管期間を過ぎた書類については、理事長の監督下において速やかに削除・廃棄するが、 削除・廃棄することが適当でないと理事会が認めた場合には、必要な期間を定めて当該申告者の COI 情報の削除・廃棄を保留できる。
    4)
    学術集会の会長
    学術集会の会長は、当該学会において発表される研究成果が、本指針に沿ったものであることを検証し、本指針に反する演題については発表を差し止めることができる。なお、これらの対処については必要に応じてCOI 委員会で審議し、その答申に基づいて会長が決定する。
    5)
    理事会
    理事会は会員あるいは学術集会や学術雑誌への発表者による COI の自己申告が不適切であると認めた場合、COI 委員会、倫理委員会、編集委員会のそれぞれに諮問し、それらの答申に基づいて改善措置などを指示することができる。
    また、一般社団法人日本脳卒中学会が事業を遂行する上で、COI に関して社会的な信頼性を損なうような重大な深刻な事態が生じた場合に、理事会は COI 委員会に諮問しその答申に基づいて検証を行い、必要に応じて社会的説明責任を果たすための声明を出すことが求められる。
    6)
    機関誌編集委員会
    機関誌編集委員会は、投稿にあたっては著者全員の COI の自己申告開示を求めるとともに、投稿される論文が本指針に沿ったものであることを検証し、もし本指針に反する場合には掲載を差し止めることができる。
    著者の中に企業所属の研究者が含まれる場合には、①当該研究者の所属企業名・部署名・職名、②当該研究への貢献内容、③当該企業からの出資額、④発表結果の帰属先、⑤研究結果の学会発表や論文発表の決定に関して関係企業が影響力の行使を可能とする契約かどうかの有無、⑥当該研究結果に影響を与えうる企業からの労務提供の有無を確認し、研究の質とともに信頼性が担保されているかどうかを総合的に検討した上で、論文受理の可否について判断すべきである。
    掲載後の論文が本指針に反していたことが明らかになった場合は、当該刊行物などに編集委員長名でその由を公知するとともに、論文撤回を求めるなどの措置を講ずることができる。
    なお、これらの対処については必要に応じてCOI委員会や理事会で審議し、機関誌編集委員長が決定する。
    7)
    その他の委員会
    その他の委員会は自らが関与する学会事業に関して、その実施が本指針に沿ったものであることを検証し、本指針に反する事態が生じた場合には、速やかに事態の改善策を検討する。なお、これらの対処については必要に応じてCOI委員会で審議し、その答申に基づいて当該委員長が決定する。
    8)
    臨床研究を行うにあたっての COI に関する留意事項
    1. 医師主導臨床研究は、対象症例数が多くなればなるほど多額の資金が必要となり、産学連携による研究費が資金源となる場合がある。このような場合には、医師主導臨床研究の資金源を学会発表や論文発表にあたって適切に開示または公表すべきである。
    2. 企業からの奨学寄附金を資金源とする医師主導臨床研究の場合についても、当該企業が資金提供者と見なされるため、細則に定めた申告基準額以上であれば資金源(unlimited grant from company)として学会発表や論文発表にあたって適切に開示または公表すべきである。
    3. 上記2項については、臨床データ集計・管理,統計解析,データ解釈ならびに論文作成において、資金提供者である企業関係者の介入がまったくないことを当該論文に、「The sponsor has no roles in study design, data collection, data analysis, data interpretation or writing of the report」のように明記すべきである。
    4. 臨床研究,特に侵襲性のある大規模な介入型研究は、実施計画書(プロトコール)に記載された年限を超えて長期間にわたり実施されることも少なくない。このため、産学連携による医学系研究を行う場合には、主任研究者は①当該研究に資金を提供した企業名ないし団体名とそれから提供された金額を年度ごとに記録し、②研究の企画立案の時点から実施期間におけるデータや議事録についても記録し、研究終了報告から5年間、論文公表から3年間記録保管しておくことが望ましい。
    5. 当該研究とは直接の関係がなくとも、当該研究内容に関係する企業からの奨学寄附金額などについても必要に応じて同様に記録保管しておくことが望ましい。
  • Ⅹ.指針違反者への措置
    1)
    指針違反者への措置
    一般社団法人日本脳卒中学会の COI 委員会は、本指針に違反する行為に関して審議する権限を有し、その審議結果を理事会に答申する。その答申に基づいて重大な遵守不履行に該当すると判断した場合には、理事会はその遵守不履行の程度に応じて「医学系研究の COI(利益相反)に関する細則」に定める措置を取ることができる。
    2)
    不服の申立
    被措置者は、一般社団法人日本脳卒中学会に対して不服申立をすることができる。一般社団法人日本脳卒中学会がこれを受理したときは、「医学系研究の COI(利益相反)に関する細則」に定める臨時審査委員会において再審理を行う。
    3)
    説明責任
    一般社団法人日本脳卒中学会は、自ら関与する事業において発表された医学系研究に関して、本指針の遵守に重大な違反があると判断した場合には、COI 委員会および理事会の協議を経てこれを公表し社会への説明責任を果たす。
  • XI.COI 自己申告書およびそこに開示された COI 情報の保管・管理

    「医学系研究の COI(利益相反)に関する細則」に基づいて、提出された COI 自己申告書 およびそこに開示された COI 情報は学会事務局において、理事長を管理者とし、個人情報として厳重に保管・管理する。

  • XII.指針運用規則の制定

    一般社団法人日本脳卒中学会は、本指針を実際に運用するために必要な「医学系研究の COI(利益相反)に関する細則」を制定する。

  • XIII.施行日および改正方法

    本指針は、社会的影響や産学連携に関する法令の改変などから、個々の事例によって一部に変更が必要となることが予想される。一般社団法人日本脳卒中学会 COI 委員会は、原則として2年ごとに本指針の見直しを行い、理事会の決議を経て、本指針を改正することができる。

  • 附則
    1. 本指針は平成 26 年1月1日より施行する。
    2. 平成27年1月1日改訂
    3. 平成28年5月1日改訂
    4. 平成29年11月4日改訂